万華鏡
「理佳子。おばさん留守?これ、渡しといて。」
「ん。わかった。ありがと。」
千尋が帰って―――
「ねえねえ、今のが例の泣き虫軟弱男?かっこいいのは認めるけど、泣き虫ってのは勘弁だわ。」
「え…あ、うん。」
友だちには千尋の事を《すぐ泣く》と話していたせいで、《泣き虫軟弱男》というレッテルを貼られていた。
千尋を苛めたくて泣き虫だと言っていた訳ではなかった。千尋を見た誰かが、
「あの子かっこいいじゃん。今はまだ小学生だけど中学生になる頃にはイケてんじゃないかなあ。今から友だちになっちゃおっかなあ。」
なんて話してるのが聞こえて嫉妬したんだ。千尋を取られたくなくてわざと言った事なのに…。
「こうしてわざわざ部屋まで来るなんて、本当は理佳子の顔が見たかったんじゃないのぉ?」
「えー?」
「あれはね、金魚のフンよ、フン。」
「キャーハハハ…やっだあ。」
「理佳子。この際はっきり言ってやんなよ。ああいう男は言わないと気付かないタイプよ。」
「な…何を言うの?」
「あんた、あいつに傍をうろちょろされちゃ、彼氏もできないよ。いいの?」
「それは…やだ。」