万華鏡


「だったらはっきり言いなよ。」

「う…うん。」



その日の夜から、千尋と関わるのは止めようと決心したものの、その日の晩ご飯をウチに食べにやって来た。

はああー、今日はおばさんが夜勤の日だったか…。

千尋のお母さんは看護師をしていて、少なくても週に一回はウチに来て、一緒にご飯を食べる。

折角意気込んで会わないようにと思ったのに意味ないじゃん。

千尋の顔を見てしまうと決心が鈍ると思い、目を合わさないようさっさと食事を終え、自室に引き上げた。

しばらくすると、いつものように二階へ上がってくる足音がする。

そして部屋の前でピタリと音が止んだ。

「りーかこ。入っていい?」

えらくご機嫌な声が聞こえた。

「……。」

「理佳ちゃん?入るよ。」

いつもは『理佳子』て呼び捨てのくせに…。

カチャ…




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