万華鏡
「軟弱だから」
「…僕、軟弱じゃないよ。」
「いつもベソかいてるくせに。」
「それは理佳子が怒ったり、悲しい顔するから…。」
「はあ!?訳わかんない事言わないで。あんたが泣くのは私のせいだって言うの!?」
「…だって…。」
「とにかく私は強い人がいいの!泣き虫はヤダ。だから出てって。」
千尋の腕を引っ張って立たせると、背中をぐいぐい押して部屋から追い出した。
部屋を追い出された千尋は、
「理佳子、ごめん。もう泣かないから…。開けてよ。理佳子!!」
ドンドンドンと扉を叩き叫んだが、私はそれに耳を塞いだ。
言ってしまって後悔した。この時すぐに謝ればよかったのに、それすらも後悔した。
友だちに「はっきり言え」と言われて返事をした手前、「言わなきゃ」という気持ちに支配されて、本当はこんな事言いたくなかったのに言ってしまった。
友だちに対する見栄。
バカにされるかもという不安。
…千尋に対する罪悪感…。
言ってしまって気が付いた。どれをとっても良いことなんか一つもないことに。
千尋の優しさを手放した瞬間だった。