万華鏡


夕方5時。

試用期間である彼女は3ヶ月の間、定時で帰る事になっている。まだ少し仕事が残っている私は彼女に告げた。

「明日から朝礼にも参加してもらうから、8時半には出勤して来てね。それと仕事の内容をメモするためのノート。今日は疲れたでしょ?ゆっくり休んで明日も頑張りましょう。お疲れ様でした。」

「おっ先でーす。」

まだほとんどの社員が残ってる中、彼女は元気に新人らしからぬ挨拶をして帰って行った。



はああー。
机に突っ伏して大きなため息を吐いた。

「どうしたの?その様子だと随分疲れたみたいだね。」

突然、頭上から降ってきた言葉に顔を上げると、一年先輩の中田圭一が立っていた。

「あ…へへ。ちょっと…。」

彼も関口君同様渉外担当で、たった今戻ったばかりのようだった。

「大変だろうけど。ま、頑張れよ。」

そう言うと自分の机に座り、今日行って来た顧客の整理を始めたようだった。

さてと…。私も後一踏ん張り。早く終えて帰ろっと。

人に教える事の難しさを痛感した一日だった。



だが、この先、しばらく彼女の行動に悩まされる事になるのだった。



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