万華鏡
3.千尋と和尚さん
「本当はさ、軟弱呼ばわりされた事より、理佳子と話せなくなった事の方がショックだった。俺はずっと昔から…もしかしたら生まれる前からかもしれない。理佳子の事がずっと大好きで、そしてそれは今も変わらない。」
「え?」
「理佳子は俺の事、好きでいてくれたことはあった?」
あんなに傷付けたのに、それでも好きだと言ってくれるの?
「千尋が生まれる前から、おばさんの大きくなったお腹に話しかけてたんだよ。聞いたことある?私は自分では覚えてなかったけど、お母さんから聞いた。生まれてからもずっと一緒にいたのに嫌いなわけない。私も大好きよ。」
そう言うと千尋が一瞬、悲しげな表情をしたような気がした。
でも目の前にいる彼はとても嬉しそうに微笑んでいて。
「ありがと、理佳子。」
どちらからともなく、お互いの両手が伸びて抱き合った。
ずっと千尋とこうしたかったのかもしれない。ちゃんと話せばもっと早く、仲直りできたのかもしれない。