万華鏡
「これ知ってる?万華鏡。俺が作ったんだ。理佳子にあげる。」
「本当に?嬉しい。ありがとう。」
万華鏡を覗いてくるくる回すと、綺麗な模様が次から次へと現れては消えていく。
「うわあ、綺麗。千尋って昔から工作得意…。え?あれ、千尋?」
たった今ここにいたのに、気が付くとさっきの大通りの方へ向かって走っている。
慌てて追いかけたけど、私が大通りへ出た時にはもう随分先にいた。
「千尋――ー!ありがとう―――!!」
両手を大きく振り、できうる限りの大声で叫んだ。
千尋も走りながら振り向くと、右手を挙げて応えてくれた。
彼の姿が見えなくなるまで見送ると、教えてもらったお寺に向かうため、千尋が走って行った方向とは逆の方へ足を向けた。