万華鏡


「あなたのお名前は?」

「…谷原理佳子です。」

「谷原…理佳子…理佳子…ああ思い出しました。千尋君のお知り合いですね。」

「はい。」

「では少し彼のお話をしましょうか。」

「あの…?」

なぜ千尋の話をするのかわからなくて和尚さんを見ると、優しい瞳の奥に何か訴えたい事があるような力強いものを感じ、黙って聞くことにした。

「千尋君がこの街に来て初めて私と出会ったのは、まだ幼さが残る中学一年の夏休みでした。それまではこの寺には気付かなかったようで、その時門扉から顔だけ覗かせるように見ていました。

声をかけると友だちの事で悩んでると言ってました。

彼と話して感じたのは、とても賢く優しい子だということ。

それから週に一度ぐらいやって来て色々話してくれるようになりました。

中でも一番彼が心配したのは…理佳子さん、貴女の事でした。」




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