万華鏡


「実は…。」

リョウ君の話は私が居酒屋で関口君と飲んだ日の事だった。

あの日、どこで誰と一緒かとしつこかったんだ。

「自分ではない誰かが俺に言わせた…というか…。うまく言えないんですが、…とにかく自分の気持ちではないんです。」

…リョウ君の言いたい事はよくわからない。自分ではない誰かとは誰の事?

その時。

それまでリョウ君の目を見て話を聞いていた和尚さんは、つい…と私やリョウ君の後ろに目をやり、

「…先程から本堂の中をうろうろしていますが、ちょっとこちらに座りませんか?」

と言った。

「「え?」」

和尚さんの目線の先を二人で見たけれど、そこには誰もいなくて。

「あの…和尚さんは一体誰と話されてるんですか?」

リョウ君が聞いた。




< 78 / 108 >

この作品をシェア

pagetop