万華鏡
「実は…。」
リョウ君の話は私が居酒屋で関口君と飲んだ日の事だった。
あの日、どこで誰と一緒かとしつこかったんだ。
「自分ではない誰かが俺に言わせた…というか…。うまく言えないんですが、…とにかく自分の気持ちではないんです。」
…リョウ君の言いたい事はよくわからない。自分ではない誰かとは誰の事?
その時。
それまでリョウ君の目を見て話を聞いていた和尚さんは、つい…と私やリョウ君の後ろに目をやり、
「…先程から本堂の中をうろうろしていますが、ちょっとこちらに座りませんか?」
と言った。
「「え?」」
和尚さんの目線の先を二人で見たけれど、そこには誰もいなくて。
「あの…和尚さんは一体誰と話されてるんですか?」
リョウ君が聞いた。