万華鏡


「貴方に取り憑いた男性の霊とです。」

ギョッとして思わず顔を見合わせた。

和尚さんはリョウ君と私の間の空いた座布団に目線を移すと、ゆっくりと諭すような口振りで話始めた。

「いいですか?貴方はもうこの世の人ではないのです。貴方が居るべき世界はここではありません。今から貴方が向かう世界へ導きます。」

そう言うと正面へ向き直り、読経を唱え始めた。

和尚さんの声が本堂に響く。その声につられるように私たち二人も目を閉じ、手を合わせていた。

祈り始めてどのくらいそうしていたのだろう。

ふと気が付くと、声を押し殺してすすり泣くような声が聞こえた。

その声の方へ目をやると、リョウ君が和尚さんを見てぼろぼろと涙を溢していた。

え…え?リョウ君、一体どうしちゃったの?




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