万華鏡
4.千尋
私は和尚さんの方へ向き直り、
「これから千尋の家を訪ねてきます。場所を教えて頂けますか?」
リョウ君に別れを告げ、お寺を後にした。
不思議な和尚さんだったな。千尋が毎週和尚さんのとこへ話に行ってたのが、わかるような気がする。
千尋の家はお寺に程近い所にあった。大きな通りから道を一本、中へ入ったところで、すぐそばにはあの一両で走る電車の線路が延びている。
家に近付くにつれ鼓動が早くなっていった。
おばさんは千尋を傷付けた私を許してくれるだろうか。
それよりも先ず、覚えていてくれるのだろうか。
緊張で手土産を持つ手に汗が滲んだ。
あった。
ここだ。
極度の緊張で手が震えた。深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、インターホンに人差し指を押し付けた。