万華鏡


出発できなくて困ってたから、理佳子ちゃんの名前を出すとこんなに効果があるんだって、改めて千尋の中の理佳子ちゃんがどんなに大きな存在だったか気づいたの。」

「大きな存在って…そんな…。」

恥ずかしくなって頬を両手で押さえた。

「あ、そうだ。これ…。千尋好きだったでしょ?黄身餡のお饅頭。お土産です。」

「まあ、ありがとう。きっと喜ぶわ。じゃあ、理佳子ちゃんが供えてちょうだい。」

「…え……。」

「こっちよ。」

リビングを出て、隣の和室へ案内された。

「おばさん。昔は仏壇なんてなかったんじゃ…。誰か亡くなったの?」

何も答えないおばさん。だまって蝋燭に火を灯し、線香を取り出した。

「ここに座ってちょうだい。」

仏壇の正面の座布団を勧められるまま、座って正面を見据えた。



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