万華鏡
「本当に…千尋が…これを?」
こっくり頷くと、
「連いて来て。」
とおばさんは二階へ上がって行った。
カチャ…
階段を上がってすぐの部屋。初めてなのに、中に入ると懐かしい感じがした。
「この部屋は…。」
「あの子の部屋よ。」
今にも千尋が、「ただいま。」て言って帰って来そうな雰囲気が漂ってる。
「…勝手に入っちゃ怒られちゃうよ…。」
「この部屋ね、あの子が居なくなって半年経っても、まだずっとそのままなの。」
居なくなったなんて言わないで。
千尋は帰って来るんだから。
今度は自分から会いに来るって言ったんだから。
おばさんは何か話してるけど、そんな事耳には入らない。
だって千尋は居ない事が前提の話だもの。