万華鏡
私は千尋に会って…
話して…
抱き合ったのよ。
ほら、まだこの手には千尋の温もりを感じる。
私が大好きだと言ってくれたの。
声にならない心の叫びが涙となって溢れてくる。
私はなぜ泣くの?
涙がなぜ溢れるの?
私は千尋が生きてると信じてるのに…。
おばさんは椅子に座って机の引き出しを開けた。
「ここに…その万華鏡入ってたのよ。この紙と一緒に。」
そこではっと我に返った。
その紙は小さなメモ用紙で、『理佳子へ』と千尋の字で書かれていた。
「それから…これ。」
一冊の大学ノートを取り出して机の上に置いた。
「これね、ここに越して来てから書き始めたものみたいで…。毎日ではない、気まぐれ日記。
全部貴女の事ばかりよ…。見てやって。」
そう言って立ち上がると下へ降りて行った。