万華鏡


想像はあくまで想像で、現実ではない。

千尋は入社してこなかった。

本当に千尋はこの後居なくなってしまったの?

今日出会った時みたいに、また突然姿を見せて、部屋に飾ってある写真の中の幼かった頃と同じ顔で、「理佳子。」て呼ぶんじゃないの?

何度も何度も会いに来てくれてた。

私がへんな意地を張って立ち止まってる間に、千尋は私よりずっと大人になってた。

馬鹿な理佳子。

何でもっと素直にできなかったのか。

今更後悔しても遅い。

千尋…千尋…千尋…。

また立ち止まってしまいそうだよ…。

千尋に会って舞い上がった心が谷底まで落ちたよう…。

私はこれからどうしたらいい?

千尋は本当に会いに来てくれるの?

……何でいなくなっちゃうの…。

千尋が悪い。

私を置いてきぼりにした千尋が悪い。

また昔の私になりそうよ。




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