おもちゃのユビワ
「私ね、秀二くんの気持ちが分かるの。」



「オレの気持ち…?」



「秀二くんは中崎さんが好きなんでしょう。そして、中崎さんは秀二くんのお兄さんが好き。違う?」



「…」



「で、秀二くんは自分を犠牲にしてる。自分の恋が実る事より、好きな人が傷つかない事を望んでるんだもの。」



「…」



「だから、お姉ちゃんたちの変化を知っておいた方がいいと思ったの。」



「…」



秀二は何も言えず黙っていた。小池の言っていることは多分正解だ。ただ、そこまで自分を分析していたわけではなかったが。



小池は続けて言った。



「私…、秀二くんが中崎さんを好きでも、やっぱり私は秀二くんが好き。私たちは似てる。だから、秀二くんの気持ち分かるよ。」



「…ごめん。」



秀二はなぜか謝っていた。



「やだ、なんで謝るの?」



「いや、何でだろう。」



「謝らないで。みじめになる。」



「…ごめん。」



「謝らないで!」



小池の目はうっすら潤んでいるようにみえた。



< 124 / 200 >

この作品をシェア

pagetop