おもちゃのユビワ
拓巳はこの春、美術大学に入学し、一人暮らしを始めた。実家からさほど遠くはないが、電車で一時間はかかる。毎日通うには少し遠い。拓巳の希望もあり、一人暮らしを始めたのだった。



「拓兄ちゃんのとこ、遊びに行きたいな。」


ナオがぼそっと呟いた。



「きっとゴミだらけよ。」



おばさんが笑った。秀二は二人の会話を聞きながらコーヒーを飲んでいる。



おばさんは思いついたように言った。



「あっ!二人で行ってみたら?」



「…ああ?何でオレ?」



秀二が不意をつかれて驚いた。



「いいね!秀二行こうよ。」



ナオは乗り気である。


「何で、兄貴のとこ行かなくちゃいけないんだよ。
兄貴だって喜ばねーって。」



「あら、そうかしら。あなたたち三人とも仲良しだから、いいと思ったんだけど…」



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