おもちゃのユビワ
「あのさ、お前兄貴んとこ行きたいんだろ?」



「え?…うん、まあね。ほら、しばらく会ってないし、寂しいじゃん。連絡もないし。」


「オレと一緒じゃなくてもよくね?」



「そりゃそうかも知れないけど…」



そうだ、ナオだけで行っても構わない。でもナオにはそれができなかった。



なぜなら、もし一人で拓巳の所へ行ったとして、それはおかしな事ではないか。



幼なじみと言えども、彼女じゃあるまいし用もないのに、堂々と部屋を訪れる事は迷惑かも知れない。



ナオは拓巳に迷惑をかけ、嫌われるのが怖かった。



一人で行く事は出来ない。でも秀二がいれば話は別だ。実の弟が遊びに行くのだから、何ら問題はない。



「やっぱ一人では行けないよ…迷惑かも知んないし。拓兄ちゃんの事だから、会いたいから行ってもいい?なんて言ったら、すぐ帰って来てくれそうだし。」



「…」



「一人で遊びに行きたいって、やっぱ変じゃない?ね、一緒に行こうよ。」



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