おもちゃのユビワ
秀二が陸上部の練習に参加してから、１ヶ月が経とうとしていた。



もともと運動神経がよく、サッカーで鍛えた持久力もあり、陸上部の仲間との差はほとんどなくなっていた。



「がんばってるな、藤村。」



秀二の担任で顧問の先生が話しかけてきた。



「はい。追い付いてきました。」



「いやー、正直こんなにがんばれるとは思ってなかった。」



「先生、陸上楽しいです。」



「だろ！
よーし、休憩！水分補給を忘れるなーっ」



先生の声を聞いた部員たちが練習をやめ、休憩に入るため、グラウンドの隅に集まった。


マネージャーがみんなのタオルや水筒を用意していた。



「はい、どうぞ。」



小池が部員たちに水筒を渡していく。秀二にも水筒を手渡した。



「はい、秀二くん。調子上がってきたね。」



「ああ。だんだんと追い付いてきた。」



秀二は小池と少し話をするようになっていた。拓巳と小池の姉が付き合っている事をナオに言わないでほしいとはまだ言えずに、タイミングを見計らっていた。


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