おもちゃのユビワ
その夜、秀二の携帯がなった。ナオである。



「もしもし秀二?」



「おぅ。」



「いよいよ明日だね。調子どう?」



「ああ、やるだけやったさ。」



「部活も明日で終わりだね。ちょっと寂しいんじゃない?」



「…ああ、少しな。」



一瞬、先生の言葉を思い出した。



『陸上部に残る選択肢もある』



「明日がんばって!応援に行くから。」



「ああ。」



「拓兄ちゃんも来るらしいよ。」



「え?な、何で知ってんの?」



「おばさんが言ってたもん。時間見て行けたら行くからだって。」



「あっ、ああ、そうか…」



「何慌ててんの?」



「いや、何でもない。」



「秀二は2区だよね。がんばって!じゃあ、おやすみ。」



「ああ、おやすみ。」



電話を切るとため息が出た。



「はああぁぁ。うまくいくかな…小池にかけるしかねーんだけどな…」



今日の小池の別れ際の態度は、いくら鈍感な秀二でも、気づかないわけがない。



(小池はオレが好きなんだろうか…)



しかし、今はそんなことを考えている場合ではなかった。



明日は精一杯走る。
ナオの事は小池にまかせる。



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