トシシタカレシ。
入学式も終わり、クラスでホームルームが始まった。
教室が1階から2階に変わって景色が良い。
席は窓側だから最近は外を眺めるのが日課。
それもこれも、担任の吉田の話が長いせいなんだけど。
進級したばかりともなると授業が無くてホームルームばっかり。
段々と飽きてくる。
今日もいつものようにぼんやりと空を流れる雲を目で追っていた。
そこにはいつもとは違う沢山の人影が目に入った。
それは今日の入学式の主役の新1年生だった。
1年生は早めの解散だったみたい。
胸には「ご入学おめでとう」と書かれたリボンと花のブローチ。
あたしも入学した時に貰ったっけ。
今でも自分の机に飾ってある。
桜並木の下を歩く1年生の集団をぼーっと眺めていた時、ふと1人の男の子と目が合った。
パッチリとした垂れ目、整った顔立ち、まるで子犬みたい。
あたしの学校の2階はそんなに高くないから2階でもよくその男の子の顔が見えた。
向こうもあたしと目が合って最初はびっくりしたみたいだったけど、その後すぐにあたしに微笑んだ。
あたしは不覚にも少しドキっとした。
…しかも年下に。
まだ自分にもこんな感情残ってたんだ。
自分の顔が少し赤くなってる事に気が付いて余計に恥ずかしくなったあたしは仕方なく吉田の話を聞く事にした。
あたしはこれが最初の出会いになるなんて思ってもみなかった。