未来へ




お葬式の1時間前、式場で受付をしてくれていた先生が凌央と同じくらいの男の子を抱いた若い夫婦を連れてきた。


その男の子は手や足に包帯を巻いていて、顔には少し擦り傷があった。



『あの!琉祈さんのお姉さんですか?』


『はい…。』


『相沢 湊人と申します。妻の彩音と息子の奏太です。

5日のお昼前に、妻が奏太と公園で遊んでいる所に、琉祈さんが来られて一緒に遊んでもらったそうなんですが。


奏太が琉祈さんと鬼ごっこをしている時に道に飛び出して…琉祈さんが助けてくれたんです。

奏太は擦り傷と打ち身で済んだのに、琉祈さんは取り返しのつかないことになってしまって…。本当に申し訳ございません!』


その場で土下座をしだした夫婦。


琉祈…。
やっぱり琉祈は自慢の弟だよ。

医者が言ったんだ。

『最後に琉祈さんが話したのは奇跡としか言えません。普通ならあの状態で話すなんてあり得ません』
って。


『頭あげてください!』


『本当にどう償っていいか…』


『琉祈は償いなんか求めてないと思います。奏太くんが元気で成長することが一番嬉しいと思います。』


『ありがとうございます!よろしかったら、連絡先を教えてもらえますか?お墓にお参りさせてもらえませんか?』


『琉祈も喜ぶと思います!お墓が建ったら連絡します』


全て本心だった。

琉祈、あってるよね?
あなたはそう望んでるよね?










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