失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
颯太の家を出てからすぐに自分の家の車を見つけた。
BMWの黒いやつ。
車にくわしくないあたしには車種までは分からない。でもこれが一番うちにあるやつで目立たないやつなんだ。
外車ぐらいならのってる人はそこらじゅうにいる。
ここで、いかにもって車に乗るのは嫌だった。
「お帰りなさい、亜美さん」
お父さんの秘書の佐伯さんがいつもあたしを迎えに来てくれる。
「ただいま、佐伯さん」
佐伯さんは最近では珍しいほど振る舞いに品がある。
特別お金持ちの家に育ったわけじゃないらしいが、親がそういうのに厳しい人だったらしい。
だからお父さんも安心して、佐伯さんを社交の場につれていく。
「随分、お仕事溜めてらっしゃいますね」
笑いを含んだその声に、苦笑いを返す。
「だよね―…、そろそろ片付けないと、お父さんも大変だしね」
亜美は、父の仕事を少し引き受けている。
亜美には弟がいるが、弟の方は頭がよろしくない。
そのため、会社は亜美にかかっている。