失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



颯太の家を出てからすぐに自分の家の車を見つけた。


BMWの黒いやつ。



車にくわしくないあたしには車種までは分からない。でもこれが一番うちにあるやつで目立たないやつなんだ。


外車ぐらいならのってる人はそこらじゅうにいる。


ここで、いかにもって車に乗るのは嫌だった。



「お帰りなさい、亜美さん」


お父さんの秘書の佐伯さんがいつもあたしを迎えに来てくれる。


「ただいま、佐伯さん」


佐伯さんは最近では珍しいほど振る舞いに品がある。


特別お金持ちの家に育ったわけじゃないらしいが、親がそういうのに厳しい人だったらしい。


だからお父さんも安心して、佐伯さんを社交の場につれていく。


「随分、お仕事溜めてらっしゃいますね」


笑いを含んだその声に、苦笑いを返す。


「だよね―…、そろそろ片付けないと、お父さんも大変だしね」


亜美は、父の仕事を少し引き受けている。


亜美には弟がいるが、弟の方は頭がよろしくない。


そのため、会社は亜美にかかっている。






< 146 / 509 >

この作品をシェア

pagetop