失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
奇想天外
会場にはすでにたくさんの人が談笑していた。
そこに新しく入っていく、あたし。
みんなの視線が一度あたしを絡めとる。
そしてこの視線はあたしにとって好意的なものであろうと、無かろうと、あたしにはその態度を前に出すことは許されない。
一瞬静まり返った会場が、どれだけ世間が深瀬を特別に見ているかがわかる。
会場のドアの前で一度立ち止まり、最高の作り笑顔で、丁寧に頭を下げた。
頭を上げれば会場内はもとに戻っていた。
あたしは与えられた仕事をこなすために、食事もほったらかして、いただいた色のきれいな飲み物を持って、あたしはお目当ての人を探しだした。
しばらくしたとき、人一倍大きな人だかりを見つけた。
――はっけーん!
上智さんだ。
今日のパーティーの主催者である、上智元(はじめ)がそこにいることは明らかだった。
穏やかな笑顔と、白髪の目立つ頭。その穏やかな風貌とは裏腹に、何代もの間、小さかった会社を影響力大の大会社に育て上げた男だ。
あたしは自分の頭の中に入っている全ての上智情報をすぐに引き出せるようにして、上智さんに近づいた。