失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
あたしが近づいたのが分かったのか、まわりの大人は穏やかな笑顔であたしが通る道を少し開けてくれた。
「ありがとうございます」
その一人一人に挨拶をしながら、お目当ての人物のもとに急いだ。
「やぁ、いらっしゃい」
あたしに気が付いた上智さんは一歩前に出て、軽く頭を下げた。
あたしはそれに続き、上智さんより深めを意識して頭を下げた。
「本日はお招きいただきまして……」
「いや、一度君を生で見たかったんだ。こちらこそ、忙しいのにわざわざありがとう」
その言葉にあたしは笑顔で頭を横に振った。
「私のようなもの、上智さんのような方に呼ばれましたらすぐに参りますよ」
世間話みたいな流れになってきた。あまり好ましくはないな。
「では今日は楽しんでください。何か困ったことがあればいつでも私達は深瀬さんの力になります。微力ですが」
「いえ、ありがたいお言葉です。父に上智さんにはいつもお世話になっているからと伺っています。こちらこそ、いつでもお手伝いする事をお約束します」
こんなことを言えるようになったなんてあたしはすごいな。なんて自分で思った。