失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
他愛ない話をしばらくした後、斎藤さんが「亜美さんに息子を紹介しようと思って、今日連れてきたんですよ」といきなり言った。
たしか斎藤さんの家の子どもは2人。長男はすでに二十歳を越えていて、会社をつぐためにアメリカに留学中という話を聞いたことがある。
それにこの長男には会ったことがある。
――次男か……
頭の中で亜美はどんな人物なのか勝手に想像していた。
長男の顔は優しそうな父親の顔を引き継いでいて、やさしそうに目を細めて笑う仕草が印象的な、インテリイケ面。
そこから推測するに、弟もイケメンだろうなとは想像がつく。
目は……多分お母さん似だろうなぁ、お母さんに会ったことないけど。
「大翔、来なさい」
………ん、大翔?
まさかね。
「初めまして、斎藤大翔です」
目の前に表れたのは確かにイケメン。
でも、あたしの知ってる人。
――ひ、大翔ってこの大翔!?
そこにはいつも東高校で馬鹿やってる、ヤンキーたちの色気担当、大翔だった。