失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



バルコニーに出た瞬間、あたしは大翔の方を向いて手を出した。


「…この手は何?」


ニヤニヤしてる。これは分かっててやってる時の反応だな。


「手帳、大事なの」


「わかってるよ。これだろ?」


大翔が取り出した赤いカバーの手帳。それを勢い良く奪い取り、抱き締めた。


「……ありがとう」


今のあたしの最高に心のこもったお礼。


「……まぁ、そのあれだ。お前、二重人格みたいだな」


雰囲気ブチ壊しだな。


「仕方ないでしょ!一応“深瀬”の顔担当なんだから」


「変顔担当の間違いだろ」


「ちげーよ」


いつもみたいにばかな会話が心に染みる。


「ってから二重人格とかその辺はあんたにも合うね」


「だろ?俺お坊ちゃんキャラでもいけるんだよね。美しく整った顔、引き締まった体、気品あふれる仕草。どれをとっても俺は一流だから」


そんな長いセリフ言われたら最初の方を忘れてつっこみにくいだけだ。


とりあえず、


「つっこむとこ多すぎて、もう意味わかんない」


頭パンク。





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