失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「最近、楽しそうだね」
ゾクッ
何か冷たいものが背中を伝った気がした。
こいつは知ってるんだ。あたしが陽たちといることを。
「……っ、何が言いたいの?」
「別に。ただ、最近笑顔が増えてきたんじゃないかな?って思っただけだよ」
そんな風にはっきりとものを言わないあんたの態度は大嫌い。そんな風に言えたらどれだけすっきりするだろう?
言えるわけ無いけど。
「……またね」
もう一生会いたくない。
でもそんなわけにはいかないのを知っているから、せめて、最小限しか会いたくない。に訂正しといてやるよ。
あたしに背中越しで手を振りながら、金井武は去っていった。
「……亜美さん」
武が去った後、すぐに佐伯さんが現れた。
「大丈夫だよ。行こう。まだ会ってない人がいるから」
「……はい」
佐伯さんは何か言いたそうだった。でも開きかけた口を閉ざした。
「そろそろ三時です。急ぎましょうか」
4時には帰りたいもんね。
ということで、あたしたちはすぐに挨拶まわりを再開させた。