失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
それからのあたしは完璧だったと思う。
「こんにちは」「ご無沙汰してます」も全部完璧だった。
かえる時になって、大翔があたしを呼び止めた。
「陽、お前に会えなくて、淋しがってんぞ。そろそろめんどくさいから会ってやるか、連絡してやってくんねぇか?」
「いいけど……」
「ってことで、頼んだぞ」
そう言って大翔は去っていった。
大翔の言葉があたしの脳内でリピートされる。
たった数日会えなかっただけで、淋しがるとか……
この先、陽の日常からあたしは居なくなるのに……
だめだよ。
陽の隣にあたしはいちゃいけない。
ふとそんなことが頭に浮かんだ。
そしてそれが最高にいい考えだと思った。
――あたしは、陽の隣にいちゃいけない。
いつの間にかかたく手を握り締めていた。
佐伯さんに手を包み込まれて初めて気が付いた。
「血が出ます。やめてください」
「あ、ごめん」
笑ってごまかすことしかできなかった。
――――――――奇想天外
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