失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



その頃亜美は…………



「あぁぁぁあぁぁあ!」



とにかく叫んでいた。



その経緯は数分前に遡る。


『陽に、電話してやってくんねぇか?』


大翔にそんなようなことを言われたから、よくないとは思いつつも携帯を手に取った。



のはよかった。



が、しかし。



指が言うことを聞いてくれなかった。


画面には“陽”と表示されている。


あとはボタンを一つ押すだけなんだ。


なのに、それができなくて、冒頭に戻る事になる。


「えぇい!この指め!ご主人の言うことくらい聞けってつーの!」


誰もいない部屋であたしは叫ぶ。


多分今、佐伯さんが現れたら、扉を無言で閉めてくれるだろう。



うん、まったくありがたくない状況だ。


「……陽」


なんであたしは陽に電話する事をこんなに躊躇っているのだろうか?


理由はまったく分からない。




ただ、声が聞きたいって思うのに、電話しちゃいけないっていう気持ちがあたしの何かを止めていた。



会わないほうがいい。



そう考えたら終わりだから、今を楽しもう!なんて改めて考え直そうか……




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