失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
そんなことができたら苦労してないか……
――とにかく、手帳のお礼も言わなきゃだから!
そう自分に言い聞かせた。
「……もしもし」
「……」
出たのは懐かしい声。
しかし……
「寝てただろ。声がカスカスだよ」
「うっせぇ」
うん、寝てたんだろうね。
分かりやすくて助かるわ。ありがとう。
陽のカスカスの声が緊張をスルスルと解いていく。
「大翔に手帳貰ったよ。ありがとう」
言えた。ちゃんと言えた。
「そっか。よかったな」
陽はカスカスの声で言った。それがなんとも言えず、笑いを誘う。
「あははは、陽、あんた声ウケる」
「……うっせぇ」
自分でも声が出てないのが分かったのか、陽は一度黙った。
「何も無かったか?」
「何が?」
「いや、別に……」
「明日は行くから」
「おう」
「シュークリーム用意しといて!」
いつのまにかあたしまでシュークリームが好きになってた。
「仕方ねぇから、高いやつ用意しといてやるよ」
フンッと効果音がつきそうなくらいの勢いで言った。
「声がカスカスだけどね」