失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
ドアの前でうろちょろ。
あっちへ行っては、ドアノブを引こうとする。
こっちへ行っては、ドアノブを引こうとする。
それを続けること数分。
中からうなり声が聞こえてきた。
「あぁぁぁぁぁあ、もうっ!」
何事だよ!
扉の前で深瀬亜美、呆然。
「――いいかげん入ってこい」
まわりを見渡してもあたしのまわりには誰もいない。
ということはあたしに話し掛けている?
「亜美、入ってこいよ」
それは紛れもなく、あたしに向けられた言葉でした。
ギィィィィと音を立ててゆっくり開いたドア。
うつむいていた顔をあげると、ソファーにドカッと座っている陽が見えた。
あとのみんなもきちんと座っている。
「……何で、あたしがいるって分かったの?」
それを聞くと、陽は無言であたしの後ろを指差した。
「ドアスコープだ」
「これは穴だ」
ドアには穴が開いていた。
今まではなかったと思う。
「ドアスコープからちゃんと見てたんだよ」
焦れったくなって、唸ってしまったというわけか。