失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
このままにしておけば、一触即発の空気になるのはまず間違いない。
「今日は帰るね」
「あ、おい、」
陽の声を後ろで聞きながら、あたしはそれを無視して瑠伊の腕をつかんで音楽室からでた。
「またねー」
瑠伊がそう言ったのが聞こえた。
きっと陽は眉間にしわを寄せて、険しい顔をしているに違いない。
家に帰るまであたしと瑠伊は一言も話さなかった。
「亜美さん、……と瑠伊さん?」
家に帰ると、佐伯さんが庭の花に水をやっていた。
その佐伯さんをスルーして、仕事中であろう親父の仕事部屋の扉を開けた。
「親父!」
ドォーンと大きな音を立てて扉を開けた。
「どうした!亜美」
「ただいま、隆さん」
「おぉ瑠伊!」
何が“おぉ瑠伊!”だよ。
「あたし、何もきいてないんだけど」
「言ってないもーん」
「歯ぁ、食い縛れ」
「すいません」
とりあえず親父の仕事が終わったら、家族会議!という約束を取り付けた。
「親父の仕事が終わるまでは余計なことは聞かないから」
あたしは瑠伊をおいて、部屋にこもった。