失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



このままにしておけば、一触即発の空気になるのはまず間違いない。


「今日は帰るね」


「あ、おい、」


陽の声を後ろで聞きながら、あたしはそれを無視して瑠伊の腕をつかんで音楽室からでた。


「またねー」


瑠伊がそう言ったのが聞こえた。


きっと陽は眉間にしわを寄せて、険しい顔をしているに違いない。





家に帰るまであたしと瑠伊は一言も話さなかった。


「亜美さん、……と瑠伊さん?」


家に帰ると、佐伯さんが庭の花に水をやっていた。


その佐伯さんをスルーして、仕事中であろう親父の仕事部屋の扉を開けた。


「親父!」


ドォーンと大きな音を立てて扉を開けた。


「どうした!亜美」


「ただいま、隆さん」


「おぉ瑠伊!」


何が“おぉ瑠伊!”だよ。


「あたし、何もきいてないんだけど」


「言ってないもーん」


「歯ぁ、食い縛れ」


「すいません」


とりあえず親父の仕事が終わったら、家族会議!という約束を取り付けた。


「親父の仕事が終わるまでは余計なことは聞かないから」


あたしは瑠伊をおいて、部屋にこもった。




< 194 / 509 >

この作品をシェア

pagetop