失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
もし、武に昔のような感情があるなら、あたしは喜んで彼の嫁になるのに。
いや、やっぱり喜んで彼の嫁にはなれないかもしれない。
あたしの気持ちなんてどうでもいいんだけどね。
「とにかく、父さんは会社が潰れないように仕事してきなさい」
「縁起でもないこというなよ」
「冗談でしょ」
笑いながら、無理矢理父さんを部屋から出した。
「……はぁ、」
1人になった途端、疲れ気がする。
「電話………………するか」
携帯をとって、電話帳の金井武を探す。
そして発信。
「……もしもし」
3コール。
それがあたしが待ったコール数。
案外すぐに出てきてくれた。
「父さんから聞いたよ、話、あるんでしょ?」
「あるよ。電話じゃなんだから、後日会いたいんだけど」
武からの思わぬ誘いに、あたしはビックリしすぎて、ハゲるかと思った。
「……え、あ、うん、いいけど」
キョドッた。めちゃくちゃキョドッた。
「……クスクス」
電話の向こうの武は、本当におかしそうに笑った。
それにも驚いた。
「……笑った」