失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
交わりと……
金井武が陽たちの前にあらわれてから二日たった頃、亜美が久しぶりに音楽室にあらわれた。
「おっはー……ってなんかあった?」
亜美は陽たちの雰囲気の変化に鋭く気が付いた。
「別になんもねぇよ」
大雅がブスッとした顔でいう。
ばかだな。そんな顔で、そんな声音で言えば、“何かありました”って言ってるようなもんだ。
「まぁ、なんでもいいけど」
怪訝そうな顔をしながらも、亜美は何も聞かず、鼻歌を口ずさみながらいつもの場所に座ろうとした。
「亜美、今日はこっちこい」
亜美が座ろうとしたのは二日前、金井武が座った場所。
あの日から陽は目に見えて機嫌が悪い。
「は?何で?」
「……昨日、大雅がソフトクリームこぼした」
なんつーいいわけだ。
理由に使われる大雅もかわいそうだが……
「なら、そっちいく。ベタベタになんのいやだし」
「拭いたし」
こんなときに発揮されるチームワーク。
ソフトクリームなんかこぼしてない。
陽はただ、亜美をあいつの座った場所と同じ場所に座らせたくなかっただけ。