失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
そんな陽の独占欲。
それに気付くわけもなく、亜美は何の迷いもなく陽の隣に座った。
「……なぁ、亜美、俺たちに何か隠してることないか?」
陽が、亜美の目を見ないで、言った。
ビクッと亜美の肩が震えた。
――隠していること
「……や、やだなぁ、何言ってんの?隠し事とかあって当たり前でしょ」
亜美が笑っていった。
――確かに、隠し事がないわけない
人間全部を話している人なんかいるわけないんだから。
「どうしたのいきなり……、もしかして」
亜美の表情が強ばった。
「た、ける?武が来たの?」
立ち上がって、周りを見渡す亜美。
そしてその亜美と目を合わせられないヤンキーたち。
「……やっぱり。やっぱり武が……来たん、だ」
――バレた、全部。
亜美は冷や汗が背中を伝うのを感じた。
「何を、聞いたの?」
「婚約者だってこと」
大翔の抑揚のない声で言った。
「……そ、う。ごめん、今日はかえるね」
無理に笑って、亜美は足早に音楽室を出ていった。