失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



それからなんとか亜美に母は死んだと伝えた。


誤魔化さず、ただ、亜美が関わったことを隠して、“事故で死んだ”と伝えた。


理解できなくても理解しなければいけないのだ。

現実を受けとめていかなければいけない。


『……亜美に、何かが足りない』


瑠伊がそんなことを言ったのは事故から5日たったころ。


『何が?』


具体的でない瑠伊のその言葉。いつもなら無視するような言葉。


でも今は聞かなければならない気がした。


亜美はアレ以来言葉を発しなくなったのだ。


泣くこともせず、笑顔になるわけでもなかった。


瑠伊は仕事で忙しい自分に代わり、いつも亜美の近くにいた。


それでなくても二人は双子なのだ。何か感じるのかもしれない。


『亜美に、足りない……』


そう言って泣くのだ。瑠伊が。


変わり果てた妹に瑠伊はどうしたらいいのかわからないでいた。


何かをしたいのに何をしたらいいかわからない。


亜美に“ナニカガタリナイ”と気付いていながら何もできない無力感。


瑠伊も悔しい思いをしていた。




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