失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
その先にあるもの
亜美が音楽室に表れたのはそれから1週間たったころだった。
何となく気まずかったし、仕事も忙しい。
「久しぶりーって誰もいない……」
少し緊張して来たのに、誰もいやしない。
あれか、かくれんぼか。
なら得意だ!
昔、隠れるのがうますぎて忘れられたこともあるんだからな!
そこまで考えてわかった。
――見つける専門じゃない
うん、アホだ。
「どうしたもんか」
ここで待つか、探しに行くか、帰るか。
探しに行くのは好ましくないね。
なにせあたし他校生だし。
そんな堂々と校舎内歩けないでしょ。
だから、待つ。
――窓が開いてる
かすかに自分の髪が揺れるのと、小さな風を感じた。
ヤンキーのくせに“煙いの嫌い”といってタバコを吸わないここのヤンキーたち。
煙たくない部屋に今、特に換気は必要ない。
閉めようと亜美が鼻歌混じりで窓に近づくと話し声が聞こえてきた。
「あの優真先輩が暴れてるんだって!見に行こうぜ!」
“あの優真先輩”?
あたしの知ってる優真君?
なんか嫌な予感がする。