失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
咄嗟に亜美は“見たくない”と思った。
一生懸命人込みをかきわけて、他校生だなんてこと忘れて、優真と陽の間に割り込んだ。
「……亜美?」
「だめぇぇえぇぇぇ」
亜美の大きな声が教室中に響き渡る。
「……ップ」
大雅め、笑いやがった。
「理由は分からないけど、喧嘩はだめぇぇ!」
とにかく、出る限りの大声を張り上げた。
「……ちょっとどこうか」
さっきまでの険悪な雰囲気はどこへやら。
優真君は普通に戻ってニコニコしていた。
どーゆーこっちゃ?
「おまっ、これ演技だしっ、まじ最高!期待を裏ぎらない!さすが将来は芸人」
おい、だれかこの大雅って奴を地獄に放り投げてくれ。
「え、演技ぃ?」
「そう、演技」
おい誰だ。優真君がキレてる的な情報を持ってきた奴は。
「とにかく、目立つのは避けたいし、音楽室行く?」
「はい……」
亜美はただうなだれて頷くばかりだった。