失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
喉に何かが引っ掛かって声がでない。そのかわり、冷や汗は全身からあふれだしている。
「……しっかりしろ」
大雅の小さな声と同時に、背中に温かいものが触れた。
――――大雅の手?
秀には見えないだろうけど、大雅はあたしを励ましてくれていた。
「俺たち急いでんだよね。シュークリーム買ってこなきゃ俺らの社長が怒っちゃうの。んじゃーねー」
いまだに動けないあたしの腕を引っ張ってその場を離れようとした。
「亜美はお気楽だな。全部忘れて」
横を通る瞬間に言われた一言にまた足がとまる。
「亜美のお母さんが死んだのは亜美のせいなのに」
ニヤッ。
大雅が怒りだすその前に、秀は気持ち悪い笑みを浮かべて去っていった。
「……ど、いうこと……?」
大雅はマズいと思った。
大雅を含め、ヤンキーたちは亜美の記憶のことについては知っている。
亜美がどんな状況だったかも。
今の精神状態はとてもじゃないけと、いいなんて言えるもんじゃなかった。
「シュークリーム、買いに行こう」