失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
亜美は部屋から出れなくなっていた。
秀のいった言葉が耳から離れなくて、頭の中で何度もリピートされる。
堪らなく怖くなる。
“アタシガコロシタ?”
秀の言葉が聞こえてくるたび浮かび上がる疑問。
都合よく、自分が忘れているなら、最低だ。
母によく懐いていたのは亜美だけじゃない。瑠伊だってそうだ。
ならば、瑠伊から母を奪ったのも、あたしなのかもしれない。
そう思うと瑠伊に会うのも怖い。
思い出そうとしても、思い出せない。
もどかしくて、淋しくて、怖い。
こんな時、淋しくないようにって、あたしは妄想を覚えたのに、最近はそれすらしていないような気がする。
あたしは……、あたしに、何が残ってるの?
動け、動けよ、頭。
前みたいに、くだらない妄想であたしを和ませてよ。
とんとん
部屋をノックする音が聞こえた。
その音にあたしは肩をビクッと震わせた。
「佐々木です」
やさしいその声に、亜美は力が抜けていくのを感じた。