失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「亜美さんが瑠伊さんのために、隆さんのために、踪を継ごうとしているのは分かっています。金井様との婚約も、会社の繁栄のためだということもです」
そんなつもりはない。
「自分を犠牲にしても、亜美さんはそんな人だ」
「違うっ!」
違うよ、あたしはそんなすごい人じゃない。
「あたしは、そんなすごい人なんかじゃない……」
「……」
返事なんかいらないと思っていたが、いざ返ってこないと、不安なる。
「亜美さんのお母様は、その様な御方だったと聞いています」
頭を壁に勢いよくぶつけた感じ。
「……っ、」
お母さん。あたしのお母さん。
まだ何も思い出せないが、あたしが殺したお母さん。
「知りたいなら、聞けばいいんです。亜美さんの頼みなら、きっと隆さんも……」
佐伯さんの言葉にまたあたしは助けられた。
「ありがとう……。いつも」
「亜美さんが大好きですから」
あはははは。
久しぶりに笑った気がした。