失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「ほんとに、ありがとうございます。佐伯さんがいてくれてよかった」
心からお礼を言いたい。
あなたがいなければあたしはただの引きこもりになるところだったんだから。
“ちゃんと聞こう”
そう思えたのも、そう決意できたのも佐伯さんのおかげなのだ。
だからこそ――――。
「佐伯さん、一緒に聞きませんか?」
「私が、ですか?」
珍しく戸惑っている様子。これはおもしろい。
「もう佐伯さんは家族です。だから、」
「よろしいんですか?」
佐伯さんも大雑把にしか知らないのだ。
隆が、瑠伊が、武が。みんなが亜美を“事実”から守ろうとした。それくらい大きな秘密なのだ。
そこに自分も同席する。
それがどれだけ大変なことなのか想像もつかない。
「ただ……嫌いにならないでください」
「え?」
不安そうに揺れる亜美の声。
「どんなにあたしが最低でも、佐伯さんだけはあたしを嫌いにならないでください」
バカだ。彼女はとてもバカだ。
私があなたを嫌いになれるわけがないのに。
「なりませんよ」
今はその言葉だけで我慢してください。