失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



さっきも言ったが、早紀の家は華道の家元。


大声で笑う事など言語道断なのだ。


春の家はホテルをいくつも経営している。
客と直に触れ合う職業だ。身なりには人一倍気を遣っていた。


それがとても気を張るのだ。


幼なじみ同士しかいないのだ。


別に気を遣う必要なんかないのだ。


「食べたいもん食べろ。今日は亜美の希望を聞いてやる」


「俺は?」

「私のは?」

「お前らは聞いてやらん。うざいから」

「ひどっ!」


そこで何で今日、幼なじみだけのパーティーが開かれたのかを理解した。


みんななりにあたしを心配してるんだ。


真実を知ってしまったあたしを。


「……ありがとう」


誰にも聞こえないくらい小さな声でお礼を言った。


聞えるように言ったらきっと“なんのこと?”とか言うんだ。


だから聞えるようには言ってやらない。


「なんか言った?」


「な、なんでもない」


いけない。


武がこっちをむいてしまった。


「あはははは」


ありえないほどの笑いでごまかした。


武だけでなく、早紀も春にも聞こえてたなんてしるよしもない。




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