失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



「……春、ネクタイは?」


「……どっかいった」


一時間後、ふと春を見れば、ネクタイが無くなっていた。


その前から、どんどん緩くなっていたなとは思っていたけど……


まさか無くなるなんて。


「ほんとはさ、髪も茶色にしたいのにさ、親父がダメっていうんだよ」


「チャラい」


春はチャラくなっていた。


「チャラくねーし。俺別にヤりまくってねーし」


「あんたのチャラい基準はおかしい」


あれ?おかしい。

あたしがまるでまともみたいじゃないか。


「春も亜美もその辺にしときなさい。ご飯冷めるよ」


早紀は無邪気に笑いながらも、最低限の礼儀はなっている。


意識しなくてもできるのだ。


体に染み付いたものは意識しなくても滲み出る。


春だって、お辞儀なんかは完璧だ。


角度、笑顔。


小さな頃からの当たり前は大人になっても当たり前。変わらないものの一つ。


「今日は、サプライズで亜美の友達も連れてきてあるんだ」


「友達?」


武がどうでもよさそうにいった言葉がひっかかる。


「しょ……?ん?なんて読むんだっけ?」


しょ?




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