失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「大翔だよ。ひ、ろ、と。翔は先じゃねぇ」
「大翔?!」
「っそ、みんな大好き大翔君だよ」
いつもならキモいとかいうんだけど、今は驚きすぎて言葉が喉でひっかかる。
「何で?」
「お呼ばれしたから」
いつもは青いメッシュが入っている髪が黒い。
それだけじゃなくて、なんていうか、所々、大翔らしくない。
「本当はみんな呼びたかったんだけど、呼んで怪しまれないのはこいつだけなんだよね」
たしかに、大金持ちの家に、一般人、しかもガラの悪いやつらを呼ぶなんて、ありえない。
その点で、大翔は唯一、怪しまれない人材だった。
「あの金井さんちにお呼ばれしたもんだから、父さんが興奮してた」
苦笑いでそういった大翔。
「仲良くなってこいってさ」
なんか大人の事情ってやつが絡んでくるのは、気分が沈む。
「勘違いしないでほしいね。俺は大翔と仲良くなる気はない。したがって、業務提携はありえない。安心しろ」
なんでこんなにリアルな話になってんだよ。
「メシ不味くなるから黙って食え」
「「……はい」」
一番怖いのは春かもしれない。