失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



「……お前はまだ帰らないのか?」


亜美が出ていったとたん、武の態度が冷たくなる。


「俺?俺もそろそろ帰ろうかな?金井さんが嫌そうな顔してるし」


「分かってるなら帰れ。お前を呼んだのは馴れ合うためじゃない。亜美を喜ばせるためだ」


「……」


なんてハッキリ言っちゃうんだよ。


「亜美のこと大好きすぎだろ」


「ふん!」


こちらを見ようともしない。


――俺は嫌い、と。


こんな分かりやすい態度を取ることは普通ならありえない。


それを大翔にとるということは、大翔にはその価値も無いということか。


まぁ、金井家に比べれば、大翔の家などかわいいものであることにはかわりはないが。


「まぁ、そんな態度になりますか。いいけどね」


「お前に使う気遣いなどない」


ひどい言われようだな。


「はいはい。さよならー」


大翔にはお付きの人はいない。


大翔が断固として断っているのだ。


兄たちにはいるみたいだが、大翔には必要ないのだ。


無言で武の家から帰った大翔は急いで部屋にこもった。


兄達が帰ってくる前に。




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