失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



部屋にこもり鍵をかけた。


それから約一時間後。


ドアをノックする音が聞こえてきた。


――ほら、きた


「大翔、いるんだろ?」


返事もしたくない。


「お前帰ってきてるなら声くらいかけてけよ」


優しい兄。


馬鹿じゃねーの。


あんたが俺の部屋を訪ねて来たのは、そんないい兄ぶるためじゃないだろ。


「……金井家のパーティーにお呼ばれしたらしいな」


ほらでた。これが言いたいんだ。


「お前、ちゃんと斎藤をアピールしてきたんだろうな?」


馬鹿兄。


うちの利益しか考えない馬鹿兄。


お前がこんなことばかりをいいにくるから俺はあんたが嫌いだ。


利用できるものは何でも利用するその精神力には完敗だ。


俺は、あんたと同じ血が少しでも流れていると思うと吐き気がするね。



俺は、物心ついたときから、あの人を父と呼ぶのを止め、あの人を兄と呼ぶのもやめた。





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