失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
震えだす手で一生懸命陽の制服を掴んだ。
そうしていないと怖いから。
「……もし、大翔がお兄さんの発言をストレスに思ってるなら、あたしも加担したかもしれないの……」
少し陽の眉間に皺が寄る。
「昨日、武の家でパーティーがあったの」
たったそれだけの言葉で何人かは分かったらしい。
「多分言われたんだと思う。“金井武と仲良くしといて損はない”とか、そんな感じのこと」
そうだ、きっとそうだ。
「……そのパーティーは、あたしがお母さんのことを知ったから開かれたあたしのためのパーティーだったの。あたしを元気付けるために、大翔も呼んでくれたの」
陽の制服にかなり皺が寄ってしまった。
「……」
その場にいる誰もが口を閉ざした。
彼等は優しい。
あたしのせいなの、絶対に。
なのに全然責めようとしない。
今だって言葉を探している、あたしを傷つけない言葉を。
責めてくれてもいいのに。
「……亜美、お前のせいじゃねぇよ」
陽、そんな言葉、今は欲しくない。
想いとは裏腹に亜美は目に熱いものが込み上げてくるのを感じた。