失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



「何に?俺が?」


「陽は何にイラついてんだよ!」


「さぁ?イラついてんのかどうかもわかんねぇや」


笑いながら言う陽。


「やっぱ何かあっただろ?亜美と」


あの時感じた違和感がここで繋がる。


善くも悪くも陽を変えるのは亜美だけだ。


今回は悪く変えてしまったんだ。


たったそれだけだ。


「……何で亜美がでてくるだよ」


何ていえばいいんだろう。
なんていえば伝わるんだろう。


「陽は、シュークリームが好きで、亜美が好きで、亜美のいるところが好きじゃなきゃ駄目なんだ」


「……なにそれ。くだらねぇ」


――――届かない。


俺じゃ、陽には届かないのか。


「――――陽、外出ろ」


「大翔っ!」


颯太の声が聞こえる。


「お前、それ八つ当りだから。今のお前は、殴る理由がある」


昔、陽は言ったことがある。


“俺は理由もなく人は殴らない。心優しい不良になる”


阿呆臭くて、その時は馬鹿にしたけど、それはただちゃんと人とぶつかろうとする陽が羨ましかっただけだ。


今は羨ましくもなんともない。


今はただ、陽が分からない。



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