失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
大翔は廊下を歩きながら病院に連絡し、携帯を閉じた。
「気ぃ、重いなぁ……」
まさか陽と喧嘩する日がくるなんて思いもしなかった。
いや、いつかはするかもしれないて思っていたかもしれない。
でも、こんなにはやいとは……。
完璧に予想外だ。
そして俺は陽には勝てない。
絶対に。
「おせぇよ」
低く、この状況を楽しむかのような声と表情。
陽には一番似合わない表情だ。
「まぁそう焦んなって」
とくに時間をかせぐ必要はない。
「――――やろうか、喧嘩」
二人の空気ががらりと代わる。
――本気だ
陽も大翔も分かってる。
本気でやらなきゃ相手は止めらるないって。
一番最初に動いたのは陽だった。
張り詰める緊張感のなか、素早く大翔との間を詰め、正面から殴りかかる。
と、見せ掛けて、一旦身を屈め、相手の懐から殴りかかる。
「見え見えなんだよっ!」
誰よりも陽を見てきた大翔だ。これくらい読める。
最低限の身のこなしで陽のこぶしを避ける。
「お前、いつもそれから始めるよな」